自動車工学基礎シリーズ 第4回 慣性力

はじめに

自動車工学シリーズの4回目です。今回は「慣性力」「慣性モーメント」について解説します。
普段クルマを見たり乗ったりしていても、これらの言葉を聞くことは少ないかもしれませんが、実は「クルマの走る・曲がる・止まる」にとって超重要な力です!
第1~3回は以下です。

「慣性」とは?

「慣性の法則」で知られる慣性とは、「物体が今の運動状態を保ち続けようとする性質」 です。

・止まっているものは、止まり続けようとする
・動いているものは、そのままの速さ、方向で動き続けようとする

急ブレーキをかけると体が前に投げ出されるように感じるます。
これは自分の体が動き続けようとする「慣性」が働いているからです。
これと同じことが、タイヤやエンジン、トランスミッション、車体自体にも発生しています。

「慣性力」とは

「慣性力(Inertial Force)」とは、「加速度があるときに見かけ上はたらく逆向きの力」 です。

上記で例に上げた、「急ブレーキ時に前に引っ張られる感じの力」が慣性力です。
これは実際になにかに引っ張られているわけでは有りませんので、「見かけ上の力」と表現されます。

「慣性モーメント」とは

「慣性モーメント(Moment of Inertia)」とは、「回転に対する慣性の大きさ」 です。
 ・重いものほど
 ・外側に重心があるほど
回転させるのが大変 = 慣性モーメントが大きい と表現します。

自動車においては、「慣性モーメントを小さくする設計」がよくされます。
 ・軽いホイール(アルミホイールなど)を採用する
 ・エンジンを低く、中央に配置する

慣性モーメントの計算方法

基本式は以下です。後述しますが、回転モーメントは「回転のしにくさ」を表す係数のようなものです

I = m r2

I 慣性モーメント(kg・m2)
m 質量(kg)
r 回転軸からの距離(m) 

慣性モーメントで発生するトルク

回転運動の基本式

τ = T ・ α

τ(タウ): トルク(Nm)
I : 慣性モーメント(kg・m2)
α : 角加速度(rad/sec2)※
※ 単位の関係は、[rpm]×2π/60 = [rad/sec] です。

これは直線運動の式と同じ形をしています

F = m ・ a
重たいものほど動かしにくい、というのは全く同じです。
つまり、慣性モーメントは「回転版の質量」とみなせます。

実践編①

もう少し具体的な例です。ダウンシフト変速を考えます。

慣性モーメント : 0.232(kg・m2)
ダウンシフトによる回転数変化量 : 1100 → 2100(rpm)
変速にかかった時間 : 1.0(sec)

この場合、変速によって以下のトルクが発生します。( 計算してみてください)
T = -24.8(Nm)
これは、「回転を上げるために、回転体が24.8Nmを消費した」という意味になります。
つまり、一時的に駆動力が無くなるため、”減速する(引き込む)”挙動になります。

アップシフト時には逆のことが発生しますし、回転数を先に上げた状態で変速すれば(ブリッピング制御)、挙動の変化がないはずです。感覚とあっているのではないでしょうか?

実践編②

自動車には多数のギヤが使われています。エンジン側を上流、タイヤ側を下流と表現する場合、「下流に与える上流の慣性モーメントの影響」は、以下のように計算できます。

下流の慣性モーメント = 上流の慣性モーメント × ギヤ比2

たとえば、最上流にあるエンジンの慣性モーメントをタイヤ軸上でどうなっているかを計算する場合、すべてのギヤ比の影響を受けるため、以下のように変換されます
(エンジン慣性モーメント) × (ギヤ比1 × ギヤ比2 × ファイナルギヤ比)2

まとめ

内部に多くの回転体を持つ製品は慣性力の影響を無視できません。
目に見えない力ですが、非常に重要な力ですので理解しておくと物理現象を解明するのに良いかと思います。

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